こんにちは。 相談役の大蛇堂です。 作品を制作して「さあギャラリーに出してみてもらおう」となった時に必要なものはいくつもありますが、その中のひとつに「キャプション」があります。 ギャラリー側が用意してくれることもありますが、大抵は自分で制作することになります。 でも始めての展示では書いたらいいか、わかりませんよね。 ここでは一般的な書き方に加え、その意味や目的を記します。 1.何を書くか作品名 ・技法・画材・支持体 ・制作年 ・サイズ・価格 が一般的です。 記載順序は特にありませんが、タイトルは一番大きく、価格は控えめのほうがよいでしょう。 額装している場合、額を含むかどうかも記載しましょう。 2.そもそもキャプションとは? キャプションとは直訳すれば「説明文」です。 でも、作品のコンセプトなどが必ず入ってるわけでもありません。 個展であれば基本的にその作家の作品なので名前は必要ありませんが、グループ展なら作家名も必要でしょう。 また、経歴・略歴など(いわゆるプロフィール)を別に用意することもあります。賞歴などを書き連ねたりもします。 賞と目の前の絵は別物だと思うのですけれど。 3.タイトルについて タイトルをつけるかで悩む作家は多くおります。 しかし世の中にはタイトルがない作品や番号だけのものもあります。必ずつけなくてはいけないものでもありません。 わたしも「絵を見ればタイトルなんか必要ない」と考えていた時もありました。 しかし「山を登る時にときルートもわからん!頂上がどこにあるかもわからんでは遭難は確実なんじゃ!」と気づいたのです。 作品タイトルやキャプションは鑑賞者との橋渡しだと思います。 作品とは大抵多くの謎を鑑賞者に投げかけるので、その謎をとく作家からの鍵が必要な作品もあるでしょうし、謎は謎のままのほうがいい作品もあります。 4.画材・技法 画材や技法はだいぶ混濁した表記がみられます。 例えば「油絵の具」なら画材ですが、「油彩」なら技法です。「岩絵具」なら画材なのですが、「日本画」になると微妙です。「日本絵具」と書いてあると岩絵具かと思ってしまいますが、今はチューブも売られてるのでほんとはそっちだったりします。 なので結構あやふやに表記されてまとめられていることが多く感じます。 写真なら「オリジナル・プリント」「ゼラチン・シルバー・プリント」まで書いたりします。 作家のこだわりの領域ともいえるでしょう。 一時期「ミクスドメディア」という表記が流行りました。「いろいろ使ってるよ」ということなのですが、親切なんだか不親切なんだかよくわかりませんね。 ちなみに始めに例に出した一條重時の作品は和紙に油彩で制作されています。 キャプションには画材が細かく書いてありますが、これも「ミクスドメディア」になるわけです。 ↑杉本博司「海景」シリーズより「カリブ海、ジャマイカ」 1980ゼラチン・シルバー・プリント 119.4×149.2 cm 引用:www.nikkeibp.co.jp/style/life/joy/exhibition/051007_sugimoto/ 5.支持体について 支持体とはキャンバスとか和紙とかハニカムボードとかのことです。 これもどこまで書くかは人次第です。 キャンバスが麻か絹かまで書く人もいれば、パネルとしか書かない方もいます。 最近は印刷技術が著しく発達しており、一見しただけではプリントだとわからないものも増えてきました。それと同時に印刷物も「版画」とみなす認識が広まっています。 原宿や渋谷の道端できれいなお姉さんが某イルカの絵の版画を売りつ…販売していましたが、あれの拡張版です。(ちなみにあれはジークレーという技法です) 複数枚存在する版画の場合、作品にエディションが手書きで入ります。 「 1/10 」のように記載し、「世界に10枚しかありませんよ」とするわけです。 某イルカの版画なんかは売れ行きがのびると「 1/100 a 」などとして母数を増やすみたいですが・・・ 7.プロフィールについて 作品キャプションのみでは作家像がみえないので、プロフィールも制作する必要がある場合があります。 これについては別途記載することにします。 ちなみに日本では「プロフィール」が重視されますが海外にでると「バイオグラフィー」と「ステートメント」が要求されます。 バイオグラフィーは生い立ちや何故作品を作るのか、ということです。ステートメントは作品に対して言いたいことです。向こうは賞歴なんか聞いてこないんですねえ。 6.キャプションの作り方 キャプション自体は紙にプリントしたものから手書きのもの、ハリパネ(スチレンボードやハレパネなどとも呼ばれる発泡ボード)で作成したものまであります。 データ自体はIllustratorで制作することが多いようですが、べつにwordでもExcelでも作れればなんでも構わないと思います。 作り方はなんにせよ展示の雰囲気や印象にあわせて選ぶ必要があるでしょう。 中にはキャプションをはらず、ギャラリーの見取り図と場所に詳細を記載したファイルを用意したりもします。 ちなみに当ギャラリーに依頼の場合はハレパネで作っております。 7.さいごに わたしのいままでの経験から、思いつく限り記してみました。 なので、かなり主観が入っています。 作家は作るほうなので、どうしても見る側の立場に立ちづらいところがあります。 意外と鑑賞者は作品が「いつ作られたのか」「どうやって作ったのか」「なにで作られているのか」を知りたいと思っています。 「技法よりも表現をみてほしい」と考えがちですが、技法も表現の一部です。 途中でも書きましたが、キャプションは鑑賞者との橋渡しだと思います。 ファンとの対話のきっかけを少しでも増やすために、鑑賞者の目線に立ったキャプションを作りましょう。 筆者:大蛇堂 APGfreestyleの相談役。約10年間、一條おろちの名で国内で活動をおこなっていた。アートサロン絵画大賞受賞、世界絵画大賞協賛社賞、上野の森美術館大賞展入選、FACE展入選、など。現在は一條重時の画号で米国を中心に作品を発表。国内では大蛇堂でイラスト・デザイン業をてがける。
4 コメント
Yoshihara Akemi
2/25/2018 03:10:50 pm
とても参考になりました。
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大蛇堂
2/27/2018 04:34:03 pm
ご覧いただきありがとうございます。
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宮本光信
3/19/2018 11:42:02 am
ありがとうございました。小生は作品に語らせよ、の主義だったのですが、貴兄の文章を読ませていただいて少々、考えを変えることにさせていただくことにします。今後はキャプションを重視して、s作品に対する小生の構えが分かるように表記することにします。
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大蛇堂
3/19/2018 08:01:24 pm
ご覧いただきありがとうございます。
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